
黒木 理帆さん(現・落 理帆さん)
元ラグビー日本代表
女性アスリートにとって、生理やホルモンバランスの変化は競技パフォーマンスに大きく影響を与えるもの。しかし、現役時代にはそれを十分に理解し、向き合う環境が整っていないことも少なくありません。元ラグビー日本代表の黒木 理帆さん(現・落 理帆さん)は、生理との向き合い方に悩みながらも、薬の服用などコンディショニングの工夫を重ね、競技生活を続けてきました。引退後に感じた課題や、今後の女子スポーツ環境への想いを伺いました。

ラグビーに打ち込んだ現役時代
中学1年生のとき、兄の試合を観戦したのをきっかけにラグビーを始めました。まずはチームメイトの多くが男子選手の地元のラグビースクールに所属しましたが、女子選手だけのチームも探して「宮崎レディース」にも所属しました。しかし、練習に集まる人数が少なく、もっと女子選手として試合に出られる環境を求めて、月に一回、車で4時間半かけて母の送迎で、「福岡レディース」の練習にも参加するようになりました。
その後、より高いレベルでプレーするために石見智翠館高校へ進学。母の勧めや監督の磯谷先生の熱心な誘いが決め手でした。大学は立正大学に進み、「アルカス熊谷」でプレー。宮崎県出身の同郷の三樹加奈選手と一緒にラグビーをしたかったことが進学の大きな理由でした。卒業後もアルカスでプレーを続けるためにチームの地元企業である、埼玉縣信用金庫に就職し、人事部に所属して週4回は午前中出社して書類整理や年末調整の業務を担当して、午後からトレーニングという基本的には競技を優先した生活を送りました。

日本代表としては、2015年の15人制のアジアチャンピオンシップに出場、2018年に7人制で初キャップを獲得。特にアジア競技大会で表彰台に上がった経験は、よりオリンピックを意識するきっかけになりました。

現役時代に悩んだ生理との向き合い方
現役時代、コンディショニングの大きな悩みの一つが生理でした。高校生の頃から生理不順で、試合や大会と重なることが多かったのですが、当時は「面倒だな」と思う程度でした。大学生になり、日本代表合宿で女性トレーナーに相談したことがきっかけで病院を受診。そこで初めて異常に気づき、薬(※ピル)の服用を開始しました。生理のタイミングをコントロールできるメリットがあった一方で、体重増加や腰痛、偏頭痛などの影響もありました。しかし、試合や合宿と重なるストレスを減らせたことは大きかったです。食事やトレーニングの面でも工夫し、週に一度は「好きなものを食べる日」を作ったり、生理中は無理をしないように意識していました。ただ、最初は薬の服用には抵抗があり、親からも心配されました。 ですが、当時女性アスリートに詳しいドクターやトレーナーに相談し、十分な情報を得た上で決断しました。また、周囲に同じように服用している選手がいたことも安心材料になりました。

引退後に感じた課題と、女子スポーツの未来
引退後の現在は、スポーツジムのインストラクターとして働いていますが、現役時代に服用していた薬をやめた途端、生理が止まってしまうということが起こりました。ホルモンバランスの乱れや、ラグビーという競技特性上、男性ホルモンの影響がある可能性も指摘されました。

この経験から、現役時代にもっと女性アスリートとして自分の体と向き合うべきだったと後悔しています。今後は、若いうちから生理や自分自身の身体やコンディショニングについて話せる環境を作り、正しい知識を学ぶ場が必要だと感じます。思い起こすと、高校時代、相談できる人がいなかったため、異変が起きたときすぐに問題に対処することができませんでした。

生理について話すことは恥ずかしいことではなく、当たり前のことで競技力やチーム力を向上させていくために大切なことであると、アスリート自身が発信していくことも大切です。これからの女子スポーツ環境がより良いものになるよう、情報が行き渡ることを願っています。

取材:小出 深冬
編集:WOMEN’S RUGBY COMMUNITY TEAM