この記事をシェア!

ラベマイまこと

横河武蔵野アルテミ・スターズ凸版印刷株式会社 所属

”ブランビーズでのシーズンを終えて“(後編)

こんにちは。

今回はvol.4に引き続き、ブランビーズでのシーズンを終えて。の後編ですが、渡豪のきっかけや私の心の揺らぎについてお話したいと思います。

私がブランビーズに参加するきっかけは、昨年11月の日本代表の欧州遠征でした。

2017年のワールドカップ以降、私は脳震盪を繰り返したこともあり、モチベーションを保つことが難しく、日本代表としてプレーを続けるかどうか悩んでいました。この迷いは誰にも打ち明けていなかったのですが、昨年、思い切ってチーム、日本代表スタッフ、所属企業の周りのたくさんの人に話を聞いてもらいました。

そのおかげか少し吹っ切れたようなポジティブな気持ちで参加できたのが、欧州遠征でした。遠征自体は実りあるものでしたが、自分のプレーには課題が多く残り、チームとしても3戦3敗と悔しい結果でした。また、試合になると大きなプレッシャーを感じ、以前のようにのびのびとプレーできないことも引っかかりました。このままでは悔いが残る、ワールドカップに向けて今できる最大限の努力をしようと考えました。

そこで思い出したのが、昨年の夏に監督から頂いた「ブランビーズが日本のプロップの選手を探しているので参加してみてはどうか」という提案でした。

欧州遠征の最終戦だったアイルランド戦の翌日、すぐに監督にまだその話が間に合うかどうか聞きに行きました。

そこから一ヶ月ほどでオーストラリアへ渡ることに。急なことにも関わらず対応してくれた、ブランビーズや日本代表スタッフ、所属企業、所属チームに対して感謝と責任を感じながらバタバタと出発となりました。

私は昨年の3月に入籍し、パートナーと生活しています。

パートナーもラグビー選手でリーグワンのチームでプレーしています。ブランビーズでの契約は1月から4月、リーグワンのシーズンも1月から5月とほとんどが同じ時期。大事な時期に家を離れることが申し訳なく、辛い気持ちもありました。でも、それくらいブランビーズへの参加は私にとって、とても大きなチャンスであり、決断でした。

パートナーのシオネ・ラべマイ選手と

そんなふうに参加したブランビーズでのシーズンでしたが、このコラムのvol.4※でお話したように合流して1ヶ月でハムストリングスの怪我、やっと復帰した試合ではプレッシャーと緊張のせいか、試合中に目の前が真っ白になるというはじめての経験をしました。

決して順調とは言えない日々でしたが、私は大事なものを得ることができました。

それは、今私が一番大切にしているものは何かという、自分の価値観の自覚です。入籍をきっかけに、私なりに守りたいもの大切にしたいものがはっきりしてきたことに気が付きました。

モチベーションを保つことが難しかった原因は脳震盪だけでなく、そこにもあったのだと思います。新しい環境に身を置きはじめての経験をしたからこそ、見えてきたものでした。今もプレッシャーや上手くいかないことはたくさんあります。しかし、代表活動はじめ、自分なりに楽しみながらラグビーをしています。

留学を楽しめるかどうかは、その人やその時の状況にもよりますし、どんな価値観で生きているかによって体感や見え方は違います。日常の生活と同じで、楽しいこともあれば悲しいこともあるし、上手く行く時もあれば上手くいかない時もあります。

今回、私はオーストラリアで触れた色々な新しい価値観や文化、ラグビー、仲間たちのお陰で自分の心と向き合い、そのことに気が付くことができました。チャレンジできた自分を少し労ってあげたら、大切なものを大事に自分の人生を自分の足で一歩ずつ、丁寧に前に進めていきたいです。

ブランビーズ(BRUMBIES):オーストラリア・キャンベラを拠点にするラグビーチーム。男子はスーパーラグビーの強豪で2020年には総合優勝、女子もスーパーウィメンズ(豪州版女子スーパーラグビー)に参戦する。

BRUMBIES https://brumbies.rugby
写真・文:ラベマイまこと