ラベマイまこと
横河武蔵野アルテミ・スターズ ・ 凸版印刷株式会社 所属
大切な日常
今回はブランビーズでのシーズン、日本代表でのオーストラリア遠征が終了し日本に帰国して、久しぶりに戻ってきた大切な日常についてお話ししたいと思います。
今年の10月8日から開催されるW杯に向けた準備で、またすぐに忙しい日々が続くのですが、それまではパートナーと2人で過ごせる数少ない時間、1日1日を大切に過ごすことにしました。
今年1月の頭から帰国した5月までの約5ヶ月間、私が家をあけて新たなチャレンジをすることをただただいつも応援してくれたパートナーには感謝してもしきれません。
帰国してからの1週間はホテルでの隔離生活で、家にはすぐには帰ることができませんでした。私が帰国した頃、パートナーはちょうど今シーズンの優勝チームを決めるプレーオフトーナメントが始まる一番大切な時期でした。女子日本代表のオーストラリア遠征中にチーム内でコロナウイルス陽性者が出たこともあり、パートナーに迷惑をかけることがないよう大事をとっての隔離となりました。
国内でのホテル隔離が明けて最初に向かった場所は大阪です。パートナーのチームの準決勝を見にホテルから出た足でそのまま飛行機に乗り、花園ラグビー場に向かいました。
準決勝は惜しくも僅差で負けてしまいましたが、久しぶりに試合を生で見て応援することができ、とても嬉しかったです。シーズン中の大事な時期に家を空けてしまい、ほとんど彼のサポートすることができなかったのにも関わらず1人で頑張り、グラウンドに立ち、体を張りチームに貢献するパートナーの姿を見て、感謝とねぎらいの気持ちが同時にこみ上げてきました。
試合観戦後は一足先に家に到着したのですが、その瞬間がオーストラリアから帰国してやっと家にたどり着いた瞬間でした。そして、その瞬間に今まで忘れていた日常を思い出させてくれる光景がありました(笑)
私のパートナーは、ニュージーランドの近くにある小さな南国の島『トンガ』の出身なのですが、トンガの人たちはとにかくよく集まり、突然家にやってきてはいつのまにか帰っていきます。最近は、コロナ禍ということもありなかなかチーム外の人たちと自由に集まったりすることはできませんでしたが、同じチームの選手たちは時間があれば私たちの家にやってきていました。私がオートラリアから帰国して、初めて自分の家のドアを開けた瞬間、その日試合には出ていなかったパートナーのチームメイトがいて「Hi!」とお出迎え。
5ヶ月の間に、慌ただしくも自由でマイペースなこの日常の生活の記憶が薄れかかっていましたが、ドアを開けた瞬間、ワンパンチで思い出させてもらえました(笑)
チームでのシーズンが終わると、嬉しいことに6月から始まった男子15人制日本代表のNDS(ナショナル・デベロップメント・スコッド)の合宿・試合にパートナーが参加することになりました。NDSとは日本代表の2次スコットのような立ち位置ではありますが、これから来年の男子のワールドカップに向けて日本代表を強化するための活動の1つです。
最初の試合は、今年始めに大きな噴火と津波の被害にあったパートナーの母国でもあるトンガの復興並びに支援を目的とした「ジャパンラグビーチャリティーマッチ2022」で、日本にルーツをもつトンガ出身のラグビー選手たちの代表チーム“TONGA SAMURAI XV(トンガサムライフィフティーン)”との試合でした。
パートナーはトンガ出身の選手ではありますが、今回は日本代表チーム“EMERGING BLOSSOMS(エマージング ブロッサムズ)”として出場することになりました。日本代表といえば赤白に桜のエンブレムを纏ったユニフォームですが、チャリティーマッチということで、同じデザインの灰色と白という色違いでとてもかっこいいユニフォームでした。
母国であるトンガとの試合で、日本にいるたくさんのトンガの人たちやその家族、ラグビーファンの人たちに見守られて桜を胸につけた代表ジャージでグラウンドに立ち、君が代を歌う彼の姿を見て、私が見てきていない時からのたくさんの本人の苦労や思いがずっしりと心に届いた気がして自然と涙が流れました。
私もオーストラリアでの生活が終わり、パートナーもNDSでの合宿と試合を終えてやっと少しだけ家でゆっくりとする時間が訪れました。
といっても、私は次の合宿にむけて練習続きだし、パートナーは今シーズンで今のチームを離れることが決まり、次のステージに向けて引越しやらなんやらとやることが山ほど…。なかなかゆっくりはできませんが(笑)お互いに支え合いながら頑張っていきたいと思います。
写真・文:ラベマイまこと