この記事をシェア!

冨田真紀子さん

アザレア・セブン / Lons Section Paloise Rugby Féminin / 株式会社フジテレビジョン 所属

日本を代表する選手として、様々な経験をしてきた冨田選手の視点で世界の女子ラグビーのカルチャーやエピソードを語ってもらう特別コラムです。タイトルの「人間万事塞翁が馬」、中国の書籍からきていることわざで、アンラッキーなこともラッキーなことかもしれないし、その逆も然り。というような意味がある言葉。W杯のイタリア戦を目前にしたvol.1では、「女子ラグビーワールドカップってなに?」がテーマです。

女子ラグビーってなに?

現在、女子 15 人制のラグビーワールドカップが開催されているのをご存じだろうか。2021 年開幕予定だったが、コロナ禍により、1年延期。 5年待った、ラグビーワールドカップ2021が、今ニュージーランドで行われている。

15人制女子ラグビーのワールドカップは、7人制ラグビーが五輪正式種目となる前からずっと続いてきた大会であり、1991 年からウエールズにて第1回大会が行われている、4年に1度の世界一決定戦。出場国は全部で12チーム。

日本は、現在世界ランキング13位だが、今大会にはアジア大陸枠として出場している。現在プール戦では、カナダとアメリカに惜しくも敗戦。

今週末10月23日(日)にはプール最終戦を迎える。

勝てば決勝トーナメント進出に可能性を繋げるが、負ければ終わり。

相手はイタリア。

実は、日本はイタリアに、前回大会 2017 年、22対0で負けている。

前回大会、グラウンドでイタリアというチームを目の当たりにした私の印象は、イタリアは“止めにくい相手”だった。

しっかり懐に入らせてくれないチーム。フィジカルは決して強くはないが、アジリティやパススキルが秀でており、しっかりした組織の中での1対1がしつこい。

つまり、『なんかうまい』。

また、女子ラグビー強豪国はヘッドキャップを装着している選手が少ないイメージだが(ルール上装着は任意)、日本やイタリアは多くの選手がヘッドキャップを頭に装着して試合をしている。ヘッドキャップの色やスタイルも、選手それぞれさまざまで、ヘッドキャップと選手を結び付けて覚えるのも面白いだろう。

そもそも女子の15人制ラグビーって強いの???

そんな疑問を持っている方もいるかもしれない。

簡単に言うと、「はい。めちゃめちゃ強くなってます」。

2017年の前回のワールドカップは黒ビールで有名なギネスビール発祥の国•アイルランドで開催された。日本は、虚しくもプール戦全敗。順位決定戦で香港に白星を挙げたが、『勝つための』ワールドカップというより、『世界を知る』ためのワールドカップだった。

というのも、日本はアジアの最大の強敵・カザフスタンを前に、アジアの枠を突破できなかったため、4大会ぶりのワールドカップ出場だったからだ。7人制ラグビーでは国際大会が増えた女子日本代表だが、15人制ラグビーとしての国際試合の場は限りなく少なく、経験値はとてつもなく浅かったのが5年前の話だ。

コロナ禍もあり、ラグビーワールドカップ2021は5年という時を経て、現在開催されているが、2017年からの5年間、元カナダ代表のレスリーヘッドコーチ が就任してから、女子日本代表は国際経験という目に見えない財産を手に入れた。

ウエールズやスコットランド、南アフリカなどの世界の強豪と試合ができるようになった。ニュージーランドとも対戦し、ラグビーの聖地ニュージーランドのイーデンパークで、君が代が流れた。

こんな時代が来るのかと、女子ラグビー選手として胸を張って生きられるようになった気もする。さらにオーストラリアやアイルランドに白星を挙げるなど、日本の女子ラグビーは確実に、着実に、強く、深く、桜の根を伸ばしてきた。

コロナ禍前の 2019 年に、日本で開催されたワールドカップでの男子日本代表の大活躍の興奮は今でも脳裏にこびりついているが、その際に、桜のエンブレムがついた赤白ジャージを購入した人も少なくないだろう。

しかし、ご存じだろうか。

女子日本代表は桜のエンブレムがついたジャージを着ることができなかった時代がある。桜を付けて戦えるようになったのは、ちょうど 20 年前。

2002 年、日本女子ラグビーフットボール連盟が日本ラグビーフットボール協会に正式に加盟してから、桜を背負えるようになった。

そんな時代を経た今現在、歴代のキャップ(日本代表としての国際試合数)授与式が、今年女子ラグビー史上初めて行われた。それは女子ラグビーにとって、とてつもなく大きな歴史的な瞬間だった。

歴代の方々の想いを繋いでいる桜のエンブレムが、目に見えない大切な価値を運んでいるに違いない。桜の想いを継承し、女子ラグビーの新しい歴史を作ろう。

さぁ、イタリア戦へ。リベンジだ。

文:冨田真紀子