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冨田真紀子さん

アザレア・セブン / Lons Section Paloise Rugby Féminin / 株式会社フジテレビジョン 所属

日本を代表する選手として様々な経験をしてきた冨田選手の特別コラム。タイトルの「人間万事塞翁が馬」は、中国の書籍からきていることわざでアンラッキーなこともラッキーなことかもしれないし、その逆も然り。というような意味がある言葉だそうです。VOL.4では、フランスでラグビーをプレーし、2シーズン目を迎えた彼女の価値観や生き方についてつづった「何が起こるかわからない」がテーマです。

何が起きるかわからない

W杯やオリンピックという4年のサイクルで物事を考えているアスリートがきっと多いだろうが、現在女子ラグビー界では、15人制ラグビーのW杯という大きなイベントが終わり、また新しいフェーズにきている選手も多いだろう。

現役を引退した選手、次のW杯に向けてリスタートした選手、目の前のラグビーを楽しんでいる選手。

本当に、十人十色。

色んな生き方があって、とても美しい。

私も色んな選手の生き方に刺激をもらっているが、31歳になった今、フランスにきて肩のオペをし、また復帰したことが私自身、本当に、奇跡みたいで。

というのも最近は、ラグビーの目的を変えながら、新しいラグビーの楽しみ方ができるようになってきたかもしれないなと思っていて。

今までは、日本代表としてのW杯やオリンピックなどの大舞台をずっと目標にラグビーしてきたため、ラグビーは生活のど真ん中にあり、ラグビーをするために生きてると言ってもおかしくないくらいだった。

結婚・妊娠・出産・キャリアを全て置き去りにし、私生活を犠牲にしながらラグビーすることが美しいことだと思っていた。

でも今は、ラグビーで何かを犠牲にするという選択肢ではなく、ラグビーしてたらどう楽しいかなという選択肢に変わってきた気がする。

どれだけ友達が増えるかなとか、どんな経験ができるかなとか、今は、あえてラグビーをすることを自分で選んでいる気がしている。

フランスで2年目のシーズンを迎えた私は今、日中、フランスで仕事をして夜はラグビーするという日々。

朝5分おきのアラームで無理やり身体を叩き起こし、朝ごはんを胃袋に突っ込み、8時から17時半まで、チームのスポンサーの会社である白ワインの会社でお手伝いをしている。

その後、夜19時からラグビーをし、21時半に帰宅。夜ご飯、洗濯すれば、あっという間に24時は過ぎてる毎日。

仕事は、思った以上にエネルギーを奪われ、時間が流れるのも遅く感じる。疲れすぎていっぱいいっぱいになり、泣きながら運転してラグビーの練習にいく日もたまにあるくらい。

でも総じて、全て、今までできなかった経験ができている気がする。

ラグビーも3週連続試合して1週休みのサイクルだったり、新しい仲間や家族みたいな友達ができたり。

まだ怒涛の毎日を楽しめる余裕は出てきてないけど、こうして自分の人生に色を加えられる生活ができている今に、とてつもなく感謝している。

ラグビーをすることをゼロにせずに、新しい「何か」を探しながらラグビーを続けたら、人生って、とてつもなく面白いなって思った2022年。

 

よく、いつまでラグビーするの?と聞かれるが、まだいつ引退かもわからなくって。

自分の身体の声を聞くのも必要かもしれないが、心の声を大切にしたいと思っていて。

朝起きていきなり、『今日やめたい』って思うのかもしれないし、『こんなんでやめられないな』って思うのかもしれない。

人生何が起こるかわからないから。だから、おもしろいんだよなきっと。

さぁ、2023年は何が起きるかな。

文:冨田真紀子