伊藤絵美さん
PEARLS チームマネージャー
三重県を拠点に活動する女子ラグビーチーム『PEARLS(パールズ)』チームマネージャーの伊藤絵美さんの3部構成のコラム。社会人になって女子ラグビーと出会い、気が付けばチームスタッフを任されるほどどっぷり。そんな伊藤さんにとってラグビーとはどんな存在か。#1ではラグビーとの出会いから振り返ります。
ラグビーとの出会い
私のラグビーとの出会いは大学生の時でした。
当時お付き合いしていた彼はラグビー部でフルバッグのスタメンとして試合に出場しており、彼の活躍をいつも陰ながら応援していました。
彼は仲間との絆も強く、ラグビーって素敵なスポーツだなと感じていました。
当時の私はバスケットボールの選手として学生生活を送っていたため、ラグビーというスポーツへの魅力は感じていたものの、数年後まさか自分がラグビーをするなんて想像もしていませんでした。
1年後、私は将来の夢だった体育教師になる事が出来ました。生まれ育った三重県の高校教師。バスケットボールに明け暮れた青春時代、私を心身共に育ててくれた教育現場に恩返しをする番だ! と意気込んで赴任した学校は県立朝明高校。
初出勤の日、驚愕の事実を知りました。
バスケットボール部が『無い。』
体育教師の仕事の中で、楽しみだったことの一つは部活動指導でした。バスケットボールの指導だったら自信を持ってできるのに、他の部活動の顧問になって自分はどうなるのだろう・・・と途方にくれていた当時の自分を今でも思い出します。そんな私に声をかけてくれたのが今のPEARLSのGMでもあり、当時朝明高校で私の上司だったラグビー部監督の斎藤久先生でした。
『バスケ部を同好会から立ち上げてチャレンジして、その間にラグビー部の副顧問になって部活のマネジメントを勉強したらどうや?』
この一言から、ラグビー部副顧問・伊藤絵美の生活がスタートしました。
初めてラグビー部の練習を見に行った時、斎藤先生が選手たちにかける一言、一言に、そして選手たちが円陣で肩を組んで熱く話す姿に、私の目にはぶわぁっと涙が溜まり、落ち着き、そしてまたぶわぁっと溜まり、こらえきれず流れ落ち、それはそれは大変な感情になりました。
『何てスポーツや、チームスポーツの極みやんラグビーって。熱い、熱すぎる!!』
当時の生徒たちと斎藤先生によって、私の心はすぐに『ラグビー大好き』にされてしまいました。
生徒たちは、花園出場を目指して日々奮闘していました。ライバルは日本代表選手も輩出している強豪・四日市農芸高校。毎日の練習に本気で全力で取り組む生徒たちの姿をそばで見てきました。
迎えた県大会決勝。
花園に初出場した年から、数年間勝つことができなかった朝明高校は、この年見事に三重県チャンピオンに返り咲き、花園出場の切符を手にしました!!(ちなみに当時のラグビー部キャプテンは天理大学へ進学後、教職経験を経て一昨年のシーズンにはPEARLSのフォワードコーチとして一緒に仕事をすることに。これも縁やなぁ〜としみじみ。)
さて本題に戻り、迎えた花園当日!
開会式の後に女子ラグビーのエキシビジョンマッチが行われていました。何気なく試合を見始めた私ですが、気が付けば体は前のめりになり目を見開いて完全にグラウンドにロックオン状態で女子の試合に釘付けになっていました。
えぐいタックルを決めるJKがいました。ボールをもったら快走するJKがいました。当時高校生だった鈴木実沙紀選手と井上愛美選手でした。(現在、鈴木実沙紀選手は東京山九フェニックスの現役選手、井上愛美選手は選手引退後に流通経済大学女子ラグビー部のHCとして活躍中)
彼女たちのおかげで、
『女子ラグビーめっちゃおもしろい!!』
と魂が揺さぶられる思いで試合観戦を終えた私の気持ちは、
『ラグビーしたい!!』へシフトチェンジ・・・
(実体験から今でも思うのは、女子ラグビーの普及において、国内で女子の試合をたくさんの人に見てもらえる機会や環境は大事ですね。)
鈴木実沙紀選手や井上愛美さんには大舞台での素晴らしいパフォーマンスで、私の心を掴んでくれてありがとうと言いたいです。のめり込むと極めたくなる性格から、オリンピックを目指して男子高校生たちと練習する日々がスタートしました。
長年バスケットボール選手として培ってきた身体能力には自信がありました。でも身長などの問題からバスケットボール選手としてはトップレベルにはいけないことも、高校生の頃から全国大会に出場するたびに痛感していました。
自分に合うスポーツは何かと模索していた中で出会った『ラグビー』。
新しいスポーツに出会ったドキドキワクワク感と、熱すぎるぐらいのラグビーの競技性に惚れた私は、日々それはそれは楽しく激しく一生懸命トレーニングに打ち込みました。
そして、2010年。
7人制ラグビーの五輪種目への採用が決まったことで、日本ラグビーフットボール協会がはじめた他競技からのタレント発掘事業の1つ“日本代表のトライアウト”を受けることになりました。
トライアウト当日、受かる気満々でいました。実際に、トライアウトを受けた選手の中でも運動能力なら誰にも負けていないという実感と自信はありました。(自分に自信があるところは私の長所でも短所でもあります。笑 若い世代の選手たちにはぜひ自己肯定感を高く持って、『自分なら絶対できる!』と自分のことを自分自身が世界で1番信じてあげて欲しいです。)
結果は合格。
日本代表候補として、代表合宿に参加させていただけることになりました。この日本代表での活動の中で、私は一生忘れることのない(忘れたくても忘れられないような体験も含む)素晴らしい経験と、一生の財産となる人物たちとの出会いが待っているのです・・・
文:伊藤絵美